【おすすめ本①】ケヴィン・ケリー「〈インターネット〉の次に来るもの」
はじめまして、NRIデジタルの平野です。私はNRIデジタルの中で、“ビジネスデザイナー”という立場でお客さまや社会のDXを支援しています。
主にビジネスサイドから、お客さまのビジネスがどうあるべきか、この業界はどう変革できるかを考え、その具体的な実現方法を見出し、エンジニアチームと並走しながら、解決策を社会実装するお手伝いをしています。
「未来を予言することは非常に難しい、ならば自分たちで未来を作り出したい」という想いのもと、「お客さまや社会が『どういう姿になっているべきか』を考えてそれを実現する」ことを大事にしたいと思っています。
今回は、こういったときに、「未来がどの方向に進んでいくか」を洞察するうえで非常に大きな学びを得ることができた本をご紹介します。
ケヴィン・ケリー著「〈インターネット〉の次に来るもの」
ケヴィン・ケリー氏は、雑誌「WIRED」の共同設立者であり、時に「ビジョナリー(予見者)」とも称される、テクノロジー分野での非常に高名な著述家・編集者です。
ちなみに2022年に、野村総合研究所(NRI)が主催する「未来創発フォーラム」に登壇いただきました。
この本では、同氏の長年の洞察に基づいて、今後30年間で不可避な変化の潮流を、12個の単語で言い表しています。この記事ですべてを紹介することはできませんが、冒頭で説明されている3つの単語から、特に感銘を受けた箇所を、以下に挙げていきます。
※以下は、本文の流用ではなく、私の独自の解釈を含み再編集したものです。
“BECOMING”
物事はすべて、完成形というものは存在せず、変化していく途中である。
技術は、生まれた瞬間に、その進化の方向性を規定している。
金属を成型するための溶鉱炉は、巨大で重工であるため、中央集権的な性質をもつが、インターネットは、分散的に存在することが可能であり、各自の手元に集約されていく
“COGNIFYING”
AIは、将来的に、今日の“電気”のように、それがどう作られ動いているかを意識せずに、“コンセント”につなぐだけで使えるようになる
「〇〇×AI」というものが今後の進化の主流になりうる
“FLOWING”
インターネットとは、ある意味では“巨大なコピー装置”であり、複製されたものが流れていく
無料でどこにでもコピーされるようになると、経済等式の位置が逆転する(昔はロウソクが照明として使われてきたが、電気がどこにでも溢れて照明になると、今度はロウソクが貴重でおしゃれなものとして使われるようになった)
無限にコピーができるようになると、価値の源泉は「コピーできないもの」になる。例えば「信用」がその最たる例
このように、すでに私たちの身の回りに存在している事象について、改めて問いかけて洞察し、その意味づけを行うことで、今後の変化を予想しています。
タイトルからは非常に具体的な技術やプロダクトが紹介されているように感じられますが、本の中身としては、抽象度が高く大きなトレンドに関する洞察が大部分となっており、より普遍的に様々な事象に応用できるものになっています。
この本から得られた学び
冒頭で、「自分たちで未来を作り出すため、お客さまや社会が『どういう姿になっているべきか』を考えてそれを実現することを大事にしている」とお伝えしました。
これを考えるうえで、「人々や物事が今後どの方向に変化していくか」に注目することが重要なポイントの一つです。
私は、多くの人々の中に「こうしたい」または「これは嫌だ」という思いが蓄積されていくと、物事はその影響を受けてその方向に未来が少しずつ変化していくと考えています。
例えば、コロナ禍によって、在宅勤務が急速に普及しました。
2018年の段階で、「世界的な疫病が流行し国家レベルで外出制限され日本で急速にリモートワークが普及する」ということを予言できた人はほぼいないでしょう。
しかし一方で、コロナとは無関係に「満員電車での通勤はつらい」「自宅から会議に出席したい」といった人々の想いは普遍的に存在しており、遅かれ早かれ、リモートワークが普及するという方向に未来が進むことは、もしかすると必然だったのかもしれません。
※コロナ禍前には、奇しくも東京都で、オリンピックに備えてリモートワーク促進キャンペーンをしていましたね。
この本の中では、過去に起こった様々な革新や、現在見え始めている小さな変化への考察を通じて、今後の大きな変化の潮流を予見しています。このように、個別の様々な兆しや個々人の価値観一つ一つに改めて向き合って意義付けをし、これを束ねながら大きな変化のうねりを洞察する、ということの重要性に改めて気づかされました。
この記事を読んでいる皆様も、この本を手に取っていただき、ご自身の課題解決に活かすことはもちろん、所属している業界、または社会全体がこの先どう進化していくのか、思いをはせてみてはいかがでしょうか。
(執筆:NRIデジタル 平野学)